ボトックス(ボツリヌストキシン製剤)は、食中毒の原因となるボツリヌス菌の神経毒を利用した医薬品です。筋肉を動かす神経刺激を遮断し、筋肉の動きを一定期間とめるため、1977年より眼瞼痙攣・顔面痙攣の治療に応用されてきました。毒といっても治療に用いるのは致死量の数千分の1で、1989年には頭痛、ワキガに対する使用を米国食品医薬品局(FDA)が認可。薬剤自体の重篤な副作用のみられない安全性の高い医薬品です。国内でもすでに眼瞼痙攣などの保険診療に用いられていました。
美容分野では「表情を変えると目立つ眉間の縦ジワ、額の横ジワ、目尻のシワ、顎のウメボシ様シワ」の治療に有効で、2002年4月、シワ取り効果をFDAが正式認可し、国内では眉間の表情ジワ治療に対して厚生労働省の認可を受けたボトックスVISTAが使用されています。
アメリカでは2000年以来、毎年100万件以上の治療が行なわれているもっともポピュラーな美容医療です。
1回の治療時間は10分程度。極細の注射針を用いますが、薬剤の性質のためかコラーゲン注入より痛みを感じるようです。とはいえ通常はクーリングのみで治療可能で、とくに痛みに弱い方は事前にテープ麻酔を使用するとさらに楽になります。治療後2-3日で効果があらわれ、4から6ヶ月持続します。定期的に治療することで、過度の表情シワを抑えるとともに、筋肉の動きによる皮膚の折りたたみによってシワが刻まれるのが予防され、淡いシワは消失してしまいます。
当院では、アラガン社のボトックス正規品のみを使用し、ボトックスによるシワ取り臨床治験分担医師をつとめた担当医が治療にあたります。(注:ボツリヌストキシン製剤には中国製の安価な製品もあります。同製品には以前、豚ゼラチンが含まれアレルギーの頻度が高かったこと、製造方法が開示されておらず未知の危険性があることから当院では採用していません)